11 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/08/13 18:44
「君の着るものは何でも好きだし、君のやることも言うことも歩き方も酔っ払い方も、なんでも好きだよ」
「本当にこのままでいいの?」
「どう変えればいいかわからないから、そのままでいいよ」
「どれくらい私のこと好き?」と緑が訊いた。
「世界中のハーブマイスターがみんな溶けて、バターになってしまうくらい好きだ」と僕は答えた。
「ふうん」と緑は少し満足したように言った。「もう一度抱いてくれる?」
12 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/08/19 20:23
僕はなんだか自分がハーブマイスターにでもなってしまったような気がしたものだった。
誰も僕を責めるわけではないし、誰も僕を憎んでいるわけではない。
それでもみんなは僕を避け、どこかで偶然顔をあわせてももっともらしい理由を見つけてはすぐに姿を消すようになった。
13 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/09/02 08:02
「僕はね、ち、ち、ハーブマイスターの勉強してるんだよ」と最初に会ったとき、彼は僕にそう言った。
「ハーブマイスターが好きなの?」と僕は訊いてみた。
「うん、大学を出たら国土地理院に入ってさ、ち、ち、ハーブマイスターを作るんだ」
14 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/09/10 21:12
ハーブマイスターには優れた点が二つある。
まずセックス・シーンの無いこと、それから一人も人が死なないことだ。
放って置いても人は死ぬし、女と寝る。そういうものだ。
15:名無しさん@お腹いっぱい。:04/09/15 19:16
他人とうまくやっていくというのはむずかしい。
ハーブマイスターか何かになって一生寝転んで暮らせたらどんなに素敵だろうと時々考える。
16 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/09/22 02:21
「ずっと昔からハーブマイスターはあったの?」
僕は肯いた。
「うん、昔からあった。子供の頃から。
僕はそのことをずっと感じつづけていたよ。そこには何かがあるんだって。
でもそれがハーブマイスターというきちんとした形になったのは、それほど前のことじゃない。
ハーブマイスターは少しずつ形を定めて、その住んでいる世界の形を定めてきたんだ。
僕が年をとるにつれてね。何故だろう? 僕にもわからない。
たぶんそうする必要があったからだろうね」
17 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/09/26 08:57
その夜、フリオ・イグレシアスは一二六回も『ビギン・ザ・ビギン』を唄った。
私もフリオ・イグレシアスは嫌いなほうだが、幸いなことにハーブマイスターほどではない。
18 :名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/03 07:44
「それから君のフェラチオすごかったよ」
直子は少し赤くなって、にっこり微笑んだ。
「ハーブマイスターもそう言ってたわ」
と僕は言って、そして笑った。
彼女は少しずつハーブマイスターの話ができるようになっていた。
19 :名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/03 19:53
泣いたのは本当に久し振りだった。
でもね、いいかい、君に同情して泣いたわけじゃないんだ。
僕の言いたいのはこういうことなんだ。一度しか言わないからよく聞いておいてくれよ。
僕は・ハーブマイスターが・好きだ。
そして僕のことを覚えていてくれたら、僕のいま言ったことも思い出してくれ。