婆さんの家に行った。
婆さんの部屋の机の上にはバナナかけがあって、いつもバナナが一房かけられている。
俺が部屋に入るとにこにこしながら「よく来たね。」と言ってくれる。
俺はバナナはそんなに好きじゃなかった。
だから、机の上のバナナに興味は無かったし、婆さんも「食べろ」とは一言も言わなかった。
ある日、机の上のバナナが黒く変色し、皮がむけかけていた。
俺がバナナを捨てようとすると、婆さんが「やめて」と言った。
婆さんにとってのバナナは縁結びだと言う。
爺さんは生前、バナナが好物で、自分の畑でもバナナを栽培していた。
その木は今でも大量のバナナを実らせている。
婆さんが始めて就職して爺さんと出会ったとき、机の上にバナナがあったそうだ。
胃潰瘍で入院したとき、孫たちが病室にあったバナナを喜んで食べたそうだ。
そして、今、机の上にバナナがある日に限って俺が来るんだそうだ。
ちょっとまてよ。
机にバナナを置いてるのは婆さんだろ。
え、婆さんはバナナなんて置いてない?
もう歳だから、自分では取れないって!?
じゃあ、どうしてここにバナナがあるんだよ。
せっかくここまで育てた、旨そうなバナナ、、、、、?
育てた?
誰が?
爺さんだろ。
爺さんって誰だよ。
俺じゃないよ。
ていうか、婆さん誰だよ。
ここは俺の家で、俺の部屋だぜ。
なんで婆さんがいるんだよ。
え、婆さんなんて居ない?
馬鹿いうなよ。
じゃあ、俺は誰としゃべってるっていうんだ?
あれ???
俺は何を喋ってるんだ?
、、、、あ、机の上にバナナがある。
もーらいっと。