2007-11-23

バナナを吊すのは誰のため

婆さんの家に行った。

婆さんの部屋の机の上にはバナナかけがあって、いつもバナナが一房かけられている。

俺が部屋に入るとにこにこしながら「よく来たね。」と言ってくれる。

そして出されたお茶を飲みながら、学校での出来事を話す。

俺はバナナはそんなに好きじゃなかった。

だから、机の上のバナナに興味は無かったし、婆さんも「食べろ」とは一言も言わなかった。

ある日、机の上のバナナが黒く変色し、皮がむけかけていた。

「婆さん、バナナ何日放置してんだ?くさりかけてるぞ。」

俺がバナナを捨てようとすると、婆さんが「やめて」と言った。

婆さんにとってのバナナは縁結びだと言う。

爺さんは生前、バナナが好物で、自分の畑でもバナナを栽培していた。

その木は今でも大量のバナナを実らせている。

婆さんが始めて就職して爺さんと出会ったとき、机の上にバナナがあったそうだ。

胃潰瘍入院したとき、孫たちが病室にあったバナナを喜んで食べたそうだ。

そして、今、机の上にバナナがある日に限って俺が来るんだそうだ。

ちょっとまてよ。

机にバナナを置いてるのは婆さんだろ。

なんで、「バナナがある」なんて他人事みたいに言うんだよ。

え、婆さんはバナナなんて置いてない?

もう歳だから、自分では取れないって!?

じゃあ、どうしてここにバナナがあるんだよ。

せっかくここまで育てた、旨そうなバナナ、、、、、?

育てた?

誰が?

爺さんだろ。

爺さんって誰だよ。

俺じゃないよ。

ていうか、婆さん誰だよ。

ここは俺の家で、俺の部屋だぜ。

なんで婆さんがいるんだよ。

え、婆さんなんて居ない?

馬鹿いうなよ。

じゃあ、俺は誰としゃべってるっていうんだ?

あれ???

俺は何を喋ってるんだ?

、、、、あ、机の上にバナナがある。

もーらいっと。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん