■表現・会話・聖戦

私は表現、この場合創作といってもいいが、それらの価値というのは、ただ会話をすることでは得られない感情を共有できたり、そこに理解が生まれたりすることだと思っている。フィクションを通じて確かに共有できるものがあるから私は物語を読むし、表現する。何にも繋がらない、誰とも共有できない断絶された創作物なんて、あるとすればだが、全く駄目だと思う。私たちが創作物に触れるのは、暇つぶしのためではないし、気分転換のためでも断じてない。

聴きたい。本気で助けを求めたことがあるのか。一点の曇りもなく誰かに何かを求めたことがあるのか。心の底から同情を欲したことがあるのか。ただ自分の内面をむき出しにしてそのまま相手にぶつけたことがあるのか。泣きながら胸のうちを打ち明けたことがあるのか。私はそんなふうにしたことは一度もない。私がそのような問題にとらわれないからそうしない、ということではない。私にだって、いつもというわけではないが、頻繁に問題は起こる。しかし、ネットでも、匿名でも、2ちゃんねるでも、私はそんなふうにはしたことはない。

家族に、親友に、恋人に、大学の恩師に、学校の先輩に、スターバックスで偶然隣の席に座った美少女に、名前も知らないインターネットの匿名に、ただ救いを求めたことがあるのか。私はない。

美しい恋人に、偶然隣に座った少年に、インターネットの匿名に、どこかの誰かに、心の中身をただブチ撒けることで、そこに理解が生まれ、許しが与えられるのならば、創作活動は、表現とはいったいなんなんだ。会話で理解されることを、わざわざ物語にする必要があるのか。会話で許されることをわざわざ表現する必要があるのか。会話でそれらが得られるのだとしたら、すべての表現は、創作物はそれら会話の下に置かれるだろう。

私は理解されたい、許してもらいたい、救われたい、そう思って私を物語に乗せる、物語を読む、日記をかく。どうか教えて欲しい。全てをただ話すことで、理解されるのか、許されるのか、救われるのか。そうすることは私にはできない。誰かに私の胸のうちをあるがままに告白することなど私には出来ない。だから、もし、そうしたことがある人がいるのならどうか教えて欲しい。

物語にすることは率直に会話することが出来ない不具者の代替行為なのか。このように書くことは無駄なのか。教えて欲しい。私はもうずっとそうやって生きてきた。孤独なのか。みんなは孤独ではないのか。どうか教えて欲しい。胸のうちを告白できるものなのか。それで理解されることがあるのか、許してもらうことがあるのか、救われることがあるのか。教えて欲しい。どうやって生きているのか。私は。

Permalink | 記事への反応(1) | 03:19

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