2007-11-08

盲導犬ってすごくね?

あいつらすごくね?

あいつらさ、赤ん坊の頃はママンと一緒にいるわけよ。

兄弟たちと一緒におっぱい吸ってるわけよ。

でもさ、それも2ヶ月だけ。

たった2ヶ月で人間の家庭に送られるの。

人間でいえば3歳の幼児なわけよ。

もうね、おっぱい恋しくて仕方ない年齢なのに引き離されるわけよ。

そんでどこ行くかってーと、あれよ。

パピーウォーカーとかいうボランティア家族んとこ。

そこで人間に慣れるわけよ。

っていうか、慣れさせられるわけよ。

求めてねーっての、ソイツは、そんなの。

だから手加減ナシで噛んだりしちゃうわけよ。

ガブっと。

でもね。

人間たちは動揺しないの。

なぜって、そういう手加減も含めて人間に慣れさせるために飼うんだから。

もうね、手のひらの上ってわけよ。

次第にソイツも新しい生活に慣れてくるわけよ、10ヶ月も経つと。

もう人間のこと家族みたいに思えてきちゃって、一緒にいるのが楽しいとさえ感じてくるわけよ。

でもね、それが大間違い。

また引き離されるわけよ。

10ヶ月で。

1歳、人間でいえば17歳なわけよ。

子供と大人の中間くらいの思春期よ。

ここまではよかったのよ。

でもここからは訓練。

半年間訓練するわけよ。

なんか遊んでくれてる!わーい!って思ってたら実は訓練なの。

もうね、見てらんない。

最初はおもちゃ使ってもらって、だんだん人に褒められることそのものをうれしく思うようになって。

端から見てたら、おお、もう・・・て感じるわけよ。

そらそうよ

結局のところ人間にいいように扱われてるだけだろ。

でもね。

でもね、ソイツはがんばるのよ。

もしかしたらもうわかってんのかもしんない。

だんだん、自分のすべきことが見えてきてるのかもしんない、ソイツ。

1歳半。

人間でいえば20歳。

大人になったソイツは厳しい訓練とテストを経て、杖をつく人間と出会うわけよ。

信号の待ち方も、電車の乗り方もわかるわけよ、ソイツ。

ちゃんと習ったし、覚えてる。

かしこいのよ。

でもいっつも散歩に連れてってくれる人間は、なんかね。

あんまりよくわかってないみたい。

あれ?これ散歩してもらってるっていうか、俺が散歩してやってるんじゃね?

とか思っちゃうわけよ、ソイツ。

でね。

自分のすべきことを知るわけよ。

この人間をちゃんと守ってやらないかん

導いてやらないかん

そうして、ゴハンもらう代わりにソイツは働くわけよ。

せっせとせっせと。

世話してやるわけよ、一生懸命

だいたい10年とちょっと。

もしかしたらその人間が、ソイツにとっての家族だったのかもしんない。

ずっと一緒にいる家族なのかもしんない。

でも、そうじゃない。

ソイツは気づくわけよ、自分の衰えに。

体が重くなってくるわけよ。

もうね、じじいになっちゃった、ソイツ。

ああ、もう世話できねーや。

そんなこと考えてるのかもしんない。

そして人間の方はね。

ソイツを世話してやれない。

世話してやりたいと思っても、できないわけよ。

で、ソイツはまた引き離されるわけよ。

孤独、結局は。

新しい人間たちとともに、ソイツは余生を過ごすわけよ。

ソイツはもういろんなヤツらと過ごしてきたから、新しい家族にもまあ、慣れるわけよ。

孤独感を感じることもあるけれど、まあ悪くないかなってソイツは思うの。

ときどきね、杖をつく人間や、最初の家族が会いに来る。

悪くない。

ソイツは、相当がんばった。

そんで、いろんな人間から愛情をもらってることに、なんとなく気づいてるわけよ。

でもね、違うよ。

本当に愛情をもらってるのはね、周りの人間

オマエから、たくさんの愛情をもらってる。

人間からの愛情なんて、オマエの大きな愛情に比べりゃちっぽけなもの。

してやれるのは、ゴハンあげたり遊んだりしてやるくらいだ。

さあ、今日も食え。

太れ、太れ。

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