夕食を食べている時に、アパートで一緒に住んでいるインド系アメリカ人Yは言った。
『同じガイナックス制作でも、フリクリは好きなんだけど、エヴァは嫌いだよ。
1話2話は見たけど、後はすっげーつまんなくて、見るのを辞めちゃった。』
アメリカではシンジ君のような内気な少年タイプの主人公はあまり理解されないと言う。以前ネットで見つけた
"アメリカオタクが選ぶ好きなアニメキャラクターアンケート"みたいなページでシンジ君がボロクソにけなされていたのを
思い出す。Yも優柔不断なシンジ君が嫌いなんだと思った。でも、Yの次の発言は少し予想外だった。
『映画版のエヴァ(古い方)も最悪。でも、唯一、テレビ版の最後の二話は最高だった。』
え、という感じだ。おめでとう、で終わるテレビ版のラストは日本のファンには不評だった。作者自身もテレビ版の最後を上書きするように
映画版を見た。映像美がクライマックスに達するのも、哲学的な主題に一応の結論が出されるのも映画版のエヴァだ。何でテレビ版の
最後は良くて、他は駄目なんだろう。Yは続けた。
『宗教的すぎるんだよ。キリスト教のさわりだけかじったようなストーリーが受けつけないんだ』
あ、と思った。かなりEye-openingな発言だった。
キリスト教的価値観はアメリカという国の根本的なものを形成している。
宗教的自由を求めて移民してきた中産階級達が設立者となった国である。妊娠中絶の問題も
ゲイの婚姻問題もIntelligence Design(笑)も、アメリカの政治のジューシーな部分を占めるのはキリスト教(もちろんプロテスタントが主流)
が関係する政策論議だ。宗教右派からの支援に頼っている政治家だけでなく、民主党左派系の政治家達もキリスト教へのリップサービス無しには
国民多数からの支持を得られない。
そんな国である。キリスト教教育に関しては日本より何歩も先にいっている国である。
そんな国で、旧約聖書だの、リリンだの、キリスト教を土台にしたストーリーのアニメが受けるか否か。
作者はアメリカンアニメギークのポリティカルコンパスのぶれ具合を全く知らないのであるが、
まず、聖書の教えに忠実でないストーリーは保守・右派には受けないであろうことが予想される。
更に、Evangellionという題名がEvangelical(宗教右派とほぼ同意語で使われる)を連想させることから
宗教右派にあまり良い印象を持たない左派(都会のスタバでラテを飲みながらThe New York Timesを読む人たち)
にも支持を受けないに違いない。
キャラの性格云々よりも、宗教的なストーリー故に、エヴァンゲリオンはアメリカで受け入れられにくいのでは無いか、Yと話している
時にそんな仮説が浮かんだ。作者は余り覚えていないが、Yに好評だったテレビ版のラスト二話は、
More philosophical, but less religiousだったと記憶しているが、まぁ、定かではない。
そんなYは今、ファイル共有ソフトでDLしたアニメ版ひぐらし(Free Fan Sub)に夢中だ。園崎魅音と梨花ちゃまがお気に入りだそうだ。
グローバル化の波を感じずにはいられない。