2007-07-27

つぶしかた

前準備、攻撃、構造化という3つのフェイズがある。

前準備

まずはコミュニティの心理的な地形を把握する。社会的な立場が同一であっても、

立場の強い人や弱い人、打たれ強いひとやそうでない人、様々な力関係が見えてくる。

一見すると「平野」のように見える組織であっても、よく観察すれば、必ず山や谷がある。

状況に応じて「地形」は変わる。メンバーの入れ替わりや、組織にもち込まれる様々な問題、

メンバー同士の喧嘩といった、様々な要因は「山」と「谷」とを逆転させ、

コミュニティ内部の地形を複雑に変えていく。

攻撃者は、対象との何気ない会話を通じて、その人の出自や年齢、得意分野や社会的な立場等を

探っていき、対象が「谷」に置かれる状況、「山」になりにくい状況を探る。

攻撃

適切な状況設定を通じて、対象が「谷」の位置で安定したところで、攻撃が行われる。

罵倒には意味がない。攻撃の目的は、対象をコミュニティから切り離すこと。

攻撃すべきポイントは、対象の「存在」や「行為」などではなく、「異質である」部分。

対象の異質性が強調されることで、「攻撃者と対象」という1対1の関係は、

コミュニティ全体に対立する一人の対象」という構図へと進化していく。

基本方針は2つ。

  • 結果ではなく過程を責める
  • 構造ではなく人間を責める

結果には再現性がある。同じ問題に別の人があたったところで、結果が変わらない可能性が残る。

結果にたどりつくまでの「過程」には、無限のやりかたが考えられるので、「異質である」ことの

非を問うべきは、「対象がたどった過程」となる。

攻撃者は、「対象が嫌いだ」というメッセージを発信してはならない。

発信すべきは、「攻撃者は、対象が実力を発揮できるような構造設定に尽力したにもかかわらず、

対象はそれに応えられなかった」という絶望感であり、外見上、攻撃者は対象を責めてはいけない。

映画フルメタルジャケット」では、パンを隠し持っていたゴーマー・パイルに与えられた罰則は、

「パンを食べる」というものだった。パイルがパンを貪っている間、それ以外の全員には

「腕立てふせ」が命じられた。

熟練した攻撃者は、攻撃を通じて、次の攻撃への前準備を済ませてしまう。

対象を罵倒する台詞を通じて、同時にそれ以外のメンバーの笑いを誘ったり、対象の失敗で迷惑を

こうむるのが対照以外のメンバー全員だったりといった設定を通じて、次の攻撃への下準備が行われる。

構造化

いじめ」というのは構造がおこすものであって、人がおこすものではない。

同じ攻撃者が対象を責めつづければ、どんなにそれを巧妙に行ったところで、

いつかは攻撃者自身がコミュニティから疎外されてしまう。

「強者が弱者いじめる」攻撃手法は、対象にはほとんどダメージにならない。

対象の周囲を囲んでいた「弱者」が牙をむき始め、「弱者弱者いじめる」

構図が生まれて、はじめて攻撃はダメージとして意味を持つようになる。

何回かの攻撃を通じて、攻撃者が最終的に目指すのは、対象を絶対的な「谷」として、

そのまわりを残り全員が「山」として取り囲む、コミュニティをそんな構造に固定すること。

コミュニティ内部には、対象と同じく立場の弱い「谷」となっているメンバーは他にもいる。

外圧を演出することで、彼らを「山」として持ち上げることができる。

コミュニティ外圧に抵抗するためには、集団が一つの価値観でまとまらなくてはならない。

同調圧力の中で合意を形成していく過程において、異物に対する攻撃が出現するのは必然であり、

集団の正義ですらある。

合意が形成されていく中で、異物としてとどまらざるを得ない対象一人を除いて、

すべてのメンバーは異物の排除に参加するか、少なくともそれを黙認する「山」となって

対象を取り囲み、対象の逃げ場を奪っていく。

外圧の演じかたは2通り。対象が不得意なものをぶつけるやりかたと、対象が得意とするものを

外圧として利用するやりかたとがある。

対象が苦手な問題を使う例としては、たとえば何人かのチームを組んで問題に当たらせるとき、

対象と組む人間が誰もいない「仲間はずれ状況」を作り出すとか、チーム全体に集団責任ルール

を設定した後、解決不可能な問題を提示して、チーム全員を罰してみせるやりかたなど。

対象が得意なものを使うときには、対象一人にほとんどの仕事を仕切ってもらって、

「仕切りたがりの対象を不快に思う、傍観者としてのそれ以外全員」という構図を演出する。

攻撃者としての自らを隠蔽しつつ、適切な外圧創作する部分に、攻撃者の技量が問われる。

大切なのはいかにイメージを操作するかであり、事実はその手段に過ぎない。

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