2007-05-18

求める事と、不可能な事

中学時代からだから、もう10年以上のつきあいの親友がいる。

お互い社会人になって学生時代のようには遊ぶ事が出来なくなってきたけれど

それでも月に1度は会ってたわいもない話をしたりしている。

その日も彼女から連絡が会って、急遽私の部屋で飲む事になった。

彼女の家と私の家は実はとても近い距離にある。

これから出る、とメールが来てから30分も経たないうちに部屋の呼び鈴が鳴った。

ドアを開けるとコンビニの袋を2つも抱えた彼女が満面の笑みで立っていた。

今日はとことん飲むからね!よろしく」

なんとなく部屋にあった卒業アルバムを捲りながら、当時の思い出話に花を咲かせていたのだが

2時間も経つと2人共すっかり酔っ払っていて呂律も危なっかしい状態になってしまっていた。

そろそろ寝ようか、そんな事を思いながら彼女を見ると彼女はどこか遠い所を見るような視線でぼんやりとしていた。

「どうしたー?眠い?」

苦笑交じりに私が言うと彼女がぽつりと言った。

「私は男の人とお付き合い出来ないし、結婚も出来ないんだと思う」

確かに、中学時代から彼女にいわゆる彼氏が居た記憶は無い。

だからと言ってそれを特に気にした素振りも見せなかったし私も気にしていなかった。

ただ出会いが無い、付き合う気が無い、それだけの事だと思っていたのだ。

何と返答したら良いものかと回らない頭で考えていると、彼女はくすりと笑ってごめんね、と言った。

ごめんね。

ずしんとその言葉の重さを感じた。

何故だか悲しくなって、それから彼女が愛おしく見えた。

その夜、シングルベッドで並んで眠った。

2人には少し狭かったけれど、いつの間にか降り始めた雨のせいで部屋はすっかり冷えていて、お互いの体温を心地よく感じた。

どちらとも無く手を繋いで、ぽつりぽつりと昔話をして、すこし黙って、動く指先でお互いを確認した。

結局眠らないまま朝が来て、彼女はあっけなく帰っていった。

私もまたねと手を振って部屋に戻ると、ビール缶やらおつまみやらで散らかった部屋をのろのろと掃除し始めた。

多分、次会う時にはまた只の親友に戻っているのだろう。

私は彼女にはなれないし、彼女は私にはなれない。

冷え性だと口癖のように言っていた彼女の指先は、朝になっても冷えたままだったから。

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