2007-04-03

ダンスバトル

私はダンス講師をやっていたのだ。

みんなの『ブロードウェイステージに立ちたい』という希望を育てたかった。

みんなの輝かんばかりの笑顔を見ているだけで幸せになれた。

今日も一日のレッスンが終わり、塾生達の帰り支度の音が聞こえてきた。

その時、ダンススクールの中で一番期待の持てる1が奇声を発した。

「ピーピー!!オマーエーモナー

その言葉を繰り返す1。

私は恐くなってしまい、その場から逃げてしまったのだ。

それがいけなかったのだ。

それから一ヶ月。

街にはあの時の1と同じような奇声が溢れかえっている。

あの時、1を捕まえて警察にでも渡しておけばよかったのだ。

自分のせいで・・・自分のせいで・・・

私はいつも自己嫌悪ばかりしていた。

それ以外にする事もなかったのだ。

外に出れば、自分も感染し、1のようになってしまう。

ふと、物音がした。

トテトテトテ・・・。

まるでドラえもんのような生物が近付いてきた。

しかし、耳が生えていた。

その生物はとても愛らしい顔をしていた。

私はその顔を見ているだけで心地良くなった。

それと同時に体の中に違う何かが侵出してくるような気がした。

「ピーピーオマエモナー」

頭が働かなくなったかのようにおかしな声が口から溢れる。

私は焦った。

その時、1の声がした。

先生、あなたみたいな人は逝ってよしだよ!」

かわいらしい生物無意識にこぼれる言葉。そして1の声。

私は混乱した。

そして、現実世界に生きられなくなった私は、妄想の世界に生きることにした。

そこには、電波がとびかい、お花畑の中でかわいらしい生物とともに私がダンスをするのだ。

妄想の世界でも、みんなブロードウェイを目指して・・・・

そして私の妄想の世界に、引きこもりになった1も一緒に暮らすことになった。

何故今まで気付かなかったのだろう。

こんなに素晴らしい世界に。

こんなに素敵な事を私に教えてくれた1に私は感謝したい。

みんなからも、敬意を持って1に接してほしい。

いつか、そしてみんなで1を連れてブロードウェイに立とう!

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