(前略)
「という訳で奥さん、このままだと瓦が割れちゃうんですよ」
「そんなの雨漏りしてから考えるわ」
「いや、雨漏りしてからじゃ遅いですよ」
「みんなそうやって言うわ。不安にさせようとしてるんでしょ。でも騙されませんよ。ごめんなさいね」(バタン)
奥さん、こういう話を聞いて不安になる気持ちはよーくわかります。だけど、皆さん確かに同じことを言うでしょう?なぜなら、本当だからですよ。本当のことだから皆言うことが一緒なんです。ちょっと考えてみてください。瓦の下はすぐに天井じゃないんです。瓦の下には野地板がありますし、その奥には天井裏があって、最近は断熱材もあって、それからやっと天井ですよ。そこまでいかないと雨漏りなんかしない。雨漏りがするのは本当によっぽどのことなんです。そして、雨漏りがするまでの時間をかけて、屋根はどんどん悪くなっていきます。雨漏りがする頃には屋根の柱がダメになってたって全然おかしくないんです。
不安なお気持ちはわかりますが、不安だからこそ向きあわなければならないものってやっぱりあるんです。それをわかっていただきたい。
ってことを上手く伝えられるようになれればいいなぁ。
この仕事を始めてから日は浅いけれども、全く手入れのされてない家を見るとやるせなくなります。高名なデザイナーに頼んだと思われる個性的な住まいも、一気に開発された似たり寄ったりの分譲住宅も、手入れをしないと同じように痛むんです。全く手入れをしない家の寿命は、よくても50年です。50年目にはもう立派なあばら屋です。もうどうしようもない。それが素人目に見てもはっきりわかる。そこまでいかなくても30年でもう家がかわいそうになります。これを超えちゃったら柱ごと何とかしないといけなくなります。そうなったらもう建て替えた方が早いですよ。
でも、ちゃんと10年ごとくらいに手を入れていったら、しっかり家は持ちます。終のすみか、3代の住む家、そういう家に住んでいきたいのだったら、建てたところに頼むなり何なりしてちゃんとお手入れしてあげてください。