小さい頃、毎日の小遣いが30円だった。
少し大きくなって、10日で300円になった。
もっと大きくなって、一ヶ月で900円になった。
しばらく後、しまった増えてないじゃん!と気が付いた。
訴えたら1000円にあげてもらえた。喜んだ。
ある日妹が言った。
お友達のXXちゃんは一日100円もらえるのに、うちはなんで?と。
母が言った。
本当は、毎日50円おこづかいをあげてるんだよ。
でも、20円はこっちに貯金してる。
緑地に小鳥が付いた、やたらと長細い通帳の表紙には
明細を見ると毎月毎月、積み立ててある。
これは、あなたたちのもの。と、母は言った。
お小遣いは少しづつだけど、年齢とともに上がっていった。
最後にもらったのは高校生の時
妹は毎週一度300円。まとめてもらうと、一気に使ってしまうから。
私は一月一度3000円。もらい忘れが面倒だったから。
今更気が付いた。妹より少なかった。
働き始めて、母親はあの緑色の通帳をくれた。
これは、あなた達のものだから。
妹はつぶやいた。あの時、20円もらってた方がよかった、と。
妹の通帳はその後、ブランドバック代に消えた。
私のほうは、何代目かの通帳が、ゆうちょ銀行に名前を変えてまだ居る。
相変わらず大した金額は入っていないが。
割と忘れがちだが、長期出張の際には、それなりに重宝した。
母親に急遽振り込んでもらった生活費を、出張先で引き出したりした。
小遣いもそうだったし、洋服や、習い物や、外食や
他の子と比べて「できない事」は山ほどあった。
でも、その「できない」生活からこつこつと、
自分んちは貧乏だけど、本当はあと少しだけあるんだよ。(20円分だけど)
という気持ちが常にあった。
だから、他の子が羨ましくて仕方がない、という事はなかった。
久しぶりに妹と、そんな話をしたら、笑われた。
自分は他の子がうらやましくてうらやましくて、そして悔しかったと。
でも、ブランドのバックを買ったことは少し後悔してる、とつぶやいた。
母が笑った。
でも、あの時じゃなきゃ買えなかったんだから、いいんじゃない?と。
破綻するお母さん銀行がおおいなかなんとしっかりした銀行だろう。 ぼくもあずけたい!