2008-12-02

あの頃、あるはずのものがぽろぽろと欠落して僕はぼろぼろだった。ふとした拍子に涙がこぼれて、抑えきれずにトイレで泣くような日々だった。人と会うときは空元気を通して笑って、そうしていくうちにきっと元気になれると思い込もうとしていた。あまり人と会うのは得意じゃないのによく一対一でご飯を食べに行った。男の人とも女の人ともご飯を食べたり遊びに行ったりした。ごく健全に、でも出不精で人付き合いが苦手な僕にとっては画期的というか捨て身というか、とにかくがむしゃらだった。

君のことはずいぶん前から知っていたけど、特になんの感情も抱いていなかった。僕が落ち込んでいるのを知っていた君がご飯でも食べに行こうと言ったから、いつもならほかに誰がいるんですか?ときくのをあえてやめて誘われるままに晩ご飯を食べに行った。僕が選んだところで、おいしいお店だった。なぜか他愛もない話が尽きなくて終電時間も忘れて話し込んでいた。僕も君も歩いて帰れるから全然問題なかったので、ゆっくり歩きながら、途中まで一緒に帰った。深夜の道は車も通らず、大通りのど真ん中を歩いても大丈夫でなんだかそれがとても楽しかった。君が気をつけて帰りなっていって交差点を渡っていったあと、楽しい気持ちを抱えたまま自転車に乗って帰った。深夜の風はもう夏も近いというのに意外に冷たかったけど、楽しい余韻はいつまでも残った。君と別れてからようやくすごく楽しかったんだってことに気づいたほど、僕は浮かれていた。君の存在不思議なくらいすっぽりと僕のすかすかになった心の中にはまり込んで、だけどあまりにも違和感がなかったのでそうなったことに気づかなかった。

あの日から君が心の中に住んでいる。

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