2008-02-22

好きな人ができてしまった。 (昆虫編)

僕は瓜実条虫。しがない虫だ。

いつもは猫のお腹の中で、ぬくぬくと暮らしている。

ある日、だらだらと眠っていたら、流れ流され、お尻の穴からはみ出してしまった。

そしてそこで顔をあげると、そこには猫の飼い主?らしき男性がいた。

とても素敵な笑顔・・・。僕は一瞬で恋に落ちた。

なんとかして彼のお腹の中に入りたい。そう思った。

でもどうすればいいだろう・・・?

解決法は直ぐに見つかった。

彼はいつもご飯に白ゴマをかけて食べている。

だから、僕はゴマになろう!スイミーが目になるように

僕はゴマのフリをして、彼に租借されよう。

きっと噛まれずに飲み込まれて、彼の中に入っていけるさ。

早速今夜決行だ!

しかし現実とは残酷なもので、僕の試みは無残な失敗に終わった。

苦労の末に無事ご飯の上に乗ることに成功し、

彼の操る箸によって、ご飯と一緒に口内に運ばれた。

しかし次の瞬間、彼の噎せ返った咆吼と伴に、米粒と一緒に吐き出されてしまった。

僕は空中を舞いながら、一瞬で事情を理解した。

部屋に散らばる米粒、そして白ゴマ

いや、白ゴマに見えた無数の瓜実条虫たち・・・。

あんな素敵な彼だもの。好きになるのが僕だけな筈がなかった。

あの時バックゲートから彼を見あげた僕、そして大勢の仲間たち。

みんな同じ恋をして、同じ事を考えた。

ゴマの中に1匹だけならわからない筈だったけど、

全てが瓜実条虫だったら、白ゴマの味の筈もなく、

それはただ瓜実条虫の味しかしないよな・・・。

僕はこの次はきっと白ゴマに生まれ変わろう。

そう思った。きっとなれるよね。

ていうか僕は昆虫じゃないよね。

気づいたけど虫だからいいやと思った。

思うことにした。

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