喧騒を離れたところで、私は煙草を吸っていた。
一息ついて、また輪の中に戻ろうとはした。
脚が嫌がった。
私はそのまま帰る旨のメールを一人の女に送ると、地下鉄に乗った。
地下鉄の車内は比較的空いていたため、私は吊革に掴まって眼を閉じ、ゆっくりと考え事をすることが出来た。
黒い鞄を持って、俺は一体何をやっているのだろう。そんな気持ちが湧いてきては押さえつけていく。
そのまま帰って、この気持ちが解決するわけじゃない。
ただ安らげれば、忘れられればその時はそれでよかった。まだ耐えられる。なんとかなるさ。なんとか。
家に帰り飼い犬に餌をやる私、一人きりの孤独な生活。
CDを掛け、夜景を眺め、ベッドに横たわり、睡眠薬を飲み、煙草を吸った。
明日も明後日も変わる事のない生活が眼前に広がっている。
ただそれも、いつか少しずつ変わっていくだろう。この夜景のように。
それまで生き延びなければならない。孤独をやりくりしながら、何も考えないようにして、時を流そう。
それしか私には出来そうになかった。
耐えられないでもない日常の生活とそれにしっかりと寄り添う孤独に、いつまで耐えられるか、いつまでだろうか。