ちょうど1年とちょっと前かな
近所の掲示板みたいなアプリでいらない本を譲りますって書いてて、申し込んできた人と手渡しすることになった
会った瞬間、うげってなった
見たことが無いくらいに手足が長くて、顔立ちがはっきりした美人で漫画みたいに大きな帽子をかぶってた
服装は嫌味なくらいオシャレで靴はスタッズを見た感じヴァレンティノ?どう見ても一般人じゃない。
自分の人生で会ったことがない人種過ぎて、かつ自分が苦手なタイプの人種に見えてどうしていいかわからなかった
しかも話し方が馬鹿で純粋な芸能人キャラ?みたいな感じで悪意が無いっぽく響く甘いタメ口かつ距離が近い
本持ってきましたよ、って行ったら両手で手を握られたありがとうっ!って でもなぜか笑顔が機械的に映る
顔が整いすぎていてキャラがTVで見る人間のようで、一般人の僕からすると不気味にしか見えない
本当の美人っていうのは、怖く見えるものなんだなってこのとき思った
名前はそうだな 仮にゆりとしよう
細かいことは中略するが、カフェで少し話した後に酒を飲みに行くことになった
僕はモデルか女優の卵かなにかかと思っていたが、聞けばアイドル声優?てきなことをやってるらしい
偏見だがオタクが好みそうな可愛い系じゃなく、キレイなお姉さん系の美人で僕が思い描くアイドル声優にはそぐわなかった
なんで飲みに行くことにしたんだろうな
明らかに自分とは世界が少しずれてるし話も合わなそうだったのに
あまりに見たこと無い美人で一度お近づきになってみるのも人生経験だと思ったのかもしれない
自分の想像に反してゆりと飲むのは面白かった
遠慮のないタメ語も慣れてしまえば気にならないそしてなにより、ゆりは予想外にある面では気遣いができる子だった
あれが魔性というやつなのだろうか
自分が店員を呼ぼうとすると、それを察してゆりがすみませ〜んと叫ぶ
トイレに行きたいなと思って、軽く店内を見回してみると、ゆりがトイレ?多分あっち!という
ゆりが煙草を吸っているのを、ぼけーと見ていると、吸う?と言ってくる
(自分は煙草を結構前に止めていて久しぶりに吸いたいなーという気持ちで見ていたんかもしれない。なお、煙草を吸う女は嫌いだ)
ああ。。というと、ゆりは吸っていた途中の煙草を自分の口に咥えさせてくる
自分はどちらかと言うと女性に対しては警戒心が強いほうだと思う
煙草を吸う女は嫌いだしゆりみたいな女は好きではない
しかし、真の魔性というのにそんなのは関係ないのだと知った
多分人間は元々も頭だけで考えているのではなくて、頭と体の両方でものを考えているのではないのかと思う
特定の場面の中では特に、肉体的な接触は思考に影響を明確に及ぼすのではないだろうか
このときの僕は脳でものを考える比率を抑え込まれていたように思える
ゆりの何気ないボディタッチが、握られた手の微かな汗ばみが、近づいたときの匂いが、脳の思考シェアをすこしづつ肉体側に奪っていく
そう
脳で考えれば好きになりようがないゆりのことを、僕は好きになっていた
肉体による思考が、ゆりに好意を寄せている。それは抗いようのない、脳による思考を無視した暴力的な好意だった
一方で脳は必死に現状についての分析を冷静に繰り返していた
ゆりがこんなに自分にベタベタとしてくる理由はなんだ?好意なのか?ただの隙の多い女なのか?遊ばれているだけか?
そしてなによりさっき彼氏がいると言っていたじゃないか
彼氏と最近しっくり言っていないのはよくわかった 寂しさを埋めたいだけか?迷惑でしかない
しかし脳が発する危険信号と危機回避を、肉体による思考は無視を繰り返す
先程も書いたとおりこれは暴力なのだ 理性が通じる世界観ではない
しかし話はシンプルだった
特段の危険性がなければ僕はこの女と寝たいのだ
付き合いたい、とかではない 恋に落ち胸をときめかせたいのだ
(長いからいっかいとめるは
うんち
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