二次元の女の子はめちゃくちゃ可愛くて、処女で、ウンコしなくて、武術の達人とか宇宙人とかだったりしてかっこよくて……それでも……愛せない。
人は言う。欠陥だらけの三次元を捨てて理想だけを集めた二次元を愛せばそれで幸せになれると。
確かに彼女達は優れていた。あらゆる点で三次元を凌駕している。
問題は二次元と三次元どちらが優れているかなんてことじゃない。
俺が二次元の女を愛せるかどうかって所にに本当の問題がある。
俺達の資質の問題だ。お前は居もしないものを愛することが出来るのか?
しかし愛せない。二次元の女を愛そうとすればするほどますます道化じみてくる。クリスマスを二人で祝ったケーキの半分を、
二次元の女が食べたものとして捨てた所でゴミ箱には誰も食わなかったケーキが残る。
「彼女はケーキがおいしいと言っていたさ」とうそぶいても、頭は現実に向けて冴え渡る。虚しさから目をそむけることはできない。
発狂でもしない限り……。
結局俺は二次元の女を愛することはできなかった。
そんなことできなかった。
二次元の女を愛せ、だって? そんなもの、絵に描いた餅を食うようなものだ。
居ないとしか思えないものはもうどうしようもない。彼女達の磨きぬかれた美点も俺の努力も全ては無駄だった。ケーキも無駄だった。
1クールのアニメが終わって少ししたら天使ちゃんマジ天使と発言する奴が消えてゆくのを止めることはできない。嫁の名前は三ヶ月で変わるし、
圧倒的な現実の要請は俺の認識を曲げさせようとしない。虫歯の痛みは人を病院に駆け込ませずにはいられず、二次元の女は愛せない。
したり顔のバカがお前の愛でているものは絵でしかないなどと言いだすずっと前から何もかもはっきりと解っていた。
二次元の女が存在しない以前に、二次元の女を愛せるような狂った人間が存在していなかった。
俺がまともな人間である限りこの壁は乗り越えられない。限界は女の側ではなく俺の方にあった。
涙は追いつけない。