その時、私は毎週金曜日に母親から100円のお小遣いをもらっていた。
今から考えるとたいしたことないけど、
自分用の財布も買ってもらって(アニメのマジックテープのやつ(笑))
親に干渉されずに自分で買うものを選べることがすごく嬉しかった。
一か月で400円。その時私は、何故か400円もあれば漫画が買えるだろうと思っていて
そしたらレジに行ったら410円だった。
(た、足りない)
頭のなかが真っ白になって、その場で固まってしまった。
その時、レジは若いお兄さんだった。
(どうしよう。怒られる……)
その時は本気で怒鳴られて、警察呼ばれるんじゃないかと思った。
お兄さんはこっちの異変に気づいて「410円ですよ?」と再度値段を言った。
とりあえず財布を開いてみて、私はさらに混乱してしまった。
(320円しかない……!?)
買い食いをしていたのを忘れていた。
もうこの時点でどうしたらいいかわからなくなって
「ご、ごめんなさい……」ってたぶん相手に聞こえてないぐらいの声で呟いて
泣いてしまった。我慢しても涙が出てきた。
お兄さん、ビックリしたと思う。
でも、一回奥に引っ込んでティッシュ箱を持って戻ってきて、
私の涙を拭いてくれた。
私がお金足りないことを伝えると
お兄さんは「大丈夫」ってまた涙を拭いてくれて
「100円は自分が出すから」と言ってくれた。
袋に入った漫画を持って泣きながら家に帰って
「いい人だったなあ」って何度も思い出した。
恥ずかしくてその本屋には行かなくなったけど(親に連れられた時はなるべく隠れてた)、
それから何度となくその人の優しさを思い出して幸せな気持ちになってた。
大学入学で上京するとき、6割くらいの本を置いていったけど、
今会ってお礼を言いたいなあ。
会いたいなあ、じゃねえだろ。ここは邂逅編まで描くのが筋だろ。ネーム練り直してからもう一度来いや。