2010-11-09

暖かい家族はまどろみの中にしか存在しない

わがままなやつだと思ってくれ。

家族は、非常にうるさい。今日も、妻が叫んでいる。子供は走り回っている。この騒々しさもひとつ醍醐味だという人がいるが、俺にはそうは思えない。ただ、いらだたせるだけの他人だ。

暖かい家庭を築こうね』と妻は結婚前に言っていた。その『暖かさ』がどんな意味かは知らなかったが、俺は適当に相槌を打っていた。彼女の言う『暖かい家庭』とは、常に何かしら生活音が鳴っており、騒々しい家庭のことだったようだ。

やれやれ

俺と妻と子供は、布団の中でくっつきあうようにして眠る。妻は後ろを向く。俺は妻の背中を見る。それでよい。老けてしわが多くなってきたお前の顔など見たくもない。寒くなってきたので、くっつきあうことで体温はちょうど良い暖かさになる。

暖かい家族はまどろみの中にしか存在しない。この瞬間だけ、俺は家族の暖かさに触れるのだ。本質的意味として。

だが、暖かさにも質がある。そして最近ではその質が下がってきている。

妻の顔は老化し始め、体はたるみ始めた。今だって、手を伸ばせば彼女脂肪に手が触れる。妻も子供最近では布団の中で豪快に屁をする。屁のぬくもりなど俺はほしくない。しかし、ぬくもりを逃したくは無いので、俺は布団の『窓』をさっと開けて、なるべく冷気が入らないように、中の空気を消臭する。

そして俺は布団の中で『どうしてこんなことになってしまったのか』という寂寥感によって眠りに落ちるのだ。

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