僕らが信じてきた近代のアート概念は、初期ロマン派的な、つまり19世紀的なものなのね。現実から離陸して、カオスを経験して、再び現実に戻る。そのとき、もはや以前の着地面には着陸できないようにさせるのが、アート。だから、もとの着地面に着陸させるのを目的とするリラクデーションやエンタテイメントとは、そこが違うというね。
でも、ポロックが気付くわけ。「そろそろ飽きてきたから、カオスを経験した後、もとの着地面にはもう着陸したくないな」みたいな欲求を持ったヤツがアートを経験して満足する、という現実があるだけじゃないかと。つまり、アートは部屋の模様替えや引っ越しと同程度のものでしかなく、リラクゼーションやエンタテイメントと本質的には違わない現実の補完物じゃないかと。