2010-02-14

小学生のときのこと。

バレンタインデーの日の朝、母親がニッコリと笑いながら、「もしチョコをもらったらこの中に入れて帰りなさい」と言って、紙袋を俺に見せた。

俺は「どうせもらえないからいいよ」と母親に言ったが、「◯◯ちゃん(俺の名前)はカッコいいからたくさんもらえるよ!」と言って自信ありげに俺に紙袋を持たせたので、俺は紙袋を持って登校することにした。


やっぱりチョコは一つももらえなかった。


下校時、俺は母親からもらった紙袋を無駄にしてはいけないと思い、家に帰るまでに道端に落ちていたゴミを拾って、紙袋に入れて帰った。

家に帰り着くと、玄関先で母親笑顔で出迎えてくれた。俺は「もらえなかったよ」と言って、ゴミの入った紙袋を母親に見せた。

すると母親は、「◯◯ちゃんはエラいね。いつかチョコもらえると思うよ」と言うと、涙をポロポロと流し始めた。

俺もその姿を見て泣いてしまった。



それから約20年が経つ。

俺はいまだにチョコをもらったことがない。

母親は数年前に自殺した。

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