もうオッサンだし、若い頃に比べたら随分強くなったつもりでいたけど、強くなったんじゃなくて、鈍くなっていたのかもしれない。俺はもっと強くなろうと思った。
昨日、そこそこ偉い人10人くらいの前で、プレゼンのようなことをした。この一ヶ月くらい、それが気になってずっとストレスを感じていた。何をどうやってもいいイメージが浮かんでこない。前日になって半分以上諦めて、「選んでもらうつもりでやるんじゃなくて、馬鹿どもに教えてやるつもりでやろう」と思い込むようにしたら、少しらくになった。それで成功のイメージももてた。
だが、狭い会議室、初めて見る顔、慣れない機材、全てがアウェーで思った以上に緊張してしまった。プレゼンでも言いたいことの7割くらいしか言えなかった。終わったら、プレゼンとはまったく別のことを矢継ぎ早に質問され、何の準備もしていなかった俺はアワアワになってしまった。頭がいいとか、回転が速いとか言われるのに慣れて、自分を過信していたのかもしれない。
質問の範囲が広すぎて、おざなりな回答しかできなかった。外国語だったから、質問が聞き取りにくく、概念を把握する前に答えを始めてしまった。はっきり言って、質問が馬鹿だと思ったが、馬鹿に合わせて一般的なことしか言えなかった。
全てが終わった後、相手を憎んだ。こちらの選んで欲しいという気持ちを見越して、相手が選ぶ権利を利用して俺を貶めようとしていると感じた。午前中に終わった仕事が一日中忘れられず、夜も眠れず、朝を迎えた。
だけど朝が来たら、なんとなく気持ちの整理がついた。結局、俺が弱かったのだ。最初のイメージどおり、知らない奴らに知らせてやればよかったのだ。そのための知識が俺には足りなかったんだ。自分が馬鹿だとわかっていない馬鹿には、圧倒的な知識力で馬鹿さを押さえ込めばよかったのだ。馬鹿を自覚させるくらい圧倒的な強さを持っていればよかったのだ。選ばれたいという気持ちが強くて、最後まで受身だった。もっと強くなりたい。強くなろう、と思った。強くなるために勉めるんだ。