自宅の向かいに、祖母が経営しているちいさな酒屋がある。
わたしはそのドアの内側で立ち尽くしている。
すぐ近くで鳴り響いているサイレンと、怒号。そして店のシャッターのおりる音。
わたしのすぐそばで姉がシャッターの操作をしている。姉の手が震えている。
わたしは姉に、何があったの、とたずねる。
姉は、事件が起こったのよ、とこたえる。姉の声が震えている。
わたしは姉に、事件ってどんなの、とたずねる。
姉は、幼児×××よ、とこたえる。幼児の後に何と言ったか聞こえない。
わたしは幼児と聞いて、甥、つまり姉の息子ユウタのことを思い出す。
わたしは姉に、ユウタは大丈夫なの、とたずねる。
姉は、ひどく憔悴した様子でわたしから視線を外す。
わたしは姉に、ユウタはどこにいるの、とたずねる。
姉は、電子レンジでも見てくればいいじゃない、と泣きながら、怒りながら、こたえた。
ここで目が覚める。