2009-11-12

あさはかな考察のあさはかさ加減

コンビニ弁当値引き販売の「会計考察」(あさはかですが・・・)

http://blog.goo.ne.jp/tukimane/e/52fda54f40b85edb20231e8301084324

↑のページにかなりの勢いで変なことが書かれていたのでコメントしようとしたが反映されないため、メモしておく。

まず、元記事でのモデルの設定は、コンビニ

弁当を毎日120個仕入れる

・仕入単価は250円

弁当は毎日100個売れている

弁当の販売単価(値引き前)は500円

弁当の販売単価(値引き後)は300円

というもの。

で、筆者は

パターン1】値引き販売すれば売上が増え、廃棄がなくなる

パターン2】値引き販売しても売上は変わらず、廃棄はそのまま

というパターンを考えると、パターン1では利益が増えるけど、パターン2では利益は減るよね→今の経済状況ではパターン2っぽくない?→じゃあ損するよね、というようなことを言っている。

まあ、パターン1では廃棄していた(=0円で売っていた)ものが300円で売れるようになり、パターン2では500円で売っていたものを300円で売るようにするのだから、当たり前の話だ。このモデルの通りなら。

しかし、この二つのパターンには「売上のばらつき」が考慮されていない。そんなことまで考えたらモデルが複雑になるじゃないか…と思うかもしれないが、この場合、「売上のばらつき」はモデルにとって本質的なものだ。どれだけ売れるかがわかっていれば、ちょうどその分だけ仕入れればいいに決まっている。ばらつきがあるから売れ残りが発生し、そこで初めて値引きをするかどうかという問題が出てくる。だから、たとえ複雑になろうとも省略しては意味がない。

また、元記事の著者は

>最大のポイントは値引き販売により売上個数が伸びるかどうかということです

と書いているが、これも間違い。値引き販売の最大の目的は、廃棄を減らす=仕入を減らす ということ。

具体的に、「日によって売上にばらつきがある」ということを反映させたモデルを見てみる。

まず、30日単位で考えることにする。

弁当価格設定は上と同じ(500円→300円)。

30日のうち、10日は 120個、10日は 100個、10日は 80個売れるとする。

毎日の始まりに、弁当は 120個ある状態を保つようにする。

・値引き販売しない場合の利益(30日)

売上(120×500×10+100×500×10+80×500×10=1,500,000円)-

仕入(120×250×30=900,000円)=600,000円

まあ、この場合は元のモデルと同じ。売れ残りは合計600個で、それらは廃棄する。

・値引き販売する場合の利益(30日)

この場合は考え方がちょっと複雑になる。前の日からの売れ残りの量に合わせて、仕入れの量を変えることになる(前日40個売れ残っていたら、当日は80個しか仕入れない)。しかし、30日全体で考えると比較的簡単になる。

簡単のため、最後の一日は 120個売れる日とする(30日全体への影響は少ないため)。また、前日の売れ残り分と新しい仕入分は並行販売し、売れ残り分は必ず売れる(500円→300円という設定であれば妥当な仮定だろう)とする。

すると、30日を通して考えると、売れ残りは出ないため、仕入の数は売れる数と同じで、仕入の合計金額は

(80×10+100×10+120×10)×250=750,000円

となる。

売上も30日を通して考える。30日間に「何個の値引き弁当を作ったか」という考え方。

毎日の最初に弁当は 120個用意しているため、100個しか売れない日は20個、80個しか売れない日は40個の「値引き弁当」を作り出すことになる。すると、30日全体では600個の「値引き弁当」ができる。

弁当全体の販売数は120×10+100×10+80×10=3000個なので、定価で売れるものは2400個、残り600個は値引き販売することになる。

結果として、売上は

2400×500+600×300=1,380,000円

となる。

つまり利益は、1,380,000円-750,000円=630,000円。

以上のように、このモデルでは売上は減少するが利益は増加する。

大切なことなのでもう一度書くが、このモデルで最も重要ポイントは「売上のばらつき」。モデルの単純さのために、最も重要ポイントを無視するというのでは話にならない。

また、ここで注目するべきところは、本部の売上&利益。販売店が毎日120個仕入れていたのが平均100個になるため、それだけでも本部は売上も利益も単純に100/120 になってしまう(ロイヤリティについては後述)。ここに、本部と販売店の対立が生まれる要因がある。この点をわかっていなければ、何もわかっていないことになる。

ところで、いわゆる「コンビニ会計」というものがある。売れた売れないにかかわらず、本部には利益分のロイヤリティを払わなければならないというもの。

一見、これを考えると複雑になりそうだが、実際はそうはならない。売れる売れないにかかわらず一定の率を取られるということは、要するにロイヤリティを含めた仕入値を真の仕入値と考えればいいこと。つまり、本部は「卸」の役割をしていることになる。

ただ、値引をすると利益が減り、「利益を分け合うという」ことを建前とするロイヤリティは減ることになる(上のモデルではその分は考えていない)。本部が値引販売をいやがる原因の一つでもある。

しかし、これはおかしな話だ。廃棄するということは0円でゴミ箱に売るというのと同じことだが、この場合にはロイヤリティはちゃんと取っているのだから。

いっそ、「利益を分け合う」なんていう意味のない建前は廃止して、「卸として利益を確保する」ということを明確にして、0円で売ろうと半額で売ろうと常に一定割合を取るとすればいい。その代わり、販売店の値引きは拘束しない(卸・小売り関係なら当然)。

こうすれば、販売店では合理的な値引きを自主的にでき、廃棄が減り、利益は増える。本部は売上が減り、利益も減るが、その利益は元々廃棄していた弁当で得ていたものだ。これが一番自然な形だろう。

ところで、原価250円・売値500円というのは、ロイヤリティを含めると非現実的な数字だ。どれだけ売れていて、どのぐらい売上に幅があって、どのぐらいの利益率ならどれだけ値引きするのがいいかというのを式にするといいのだろうが、ちゃんと考えようとすると、分散とかそのへんを考えないといけなさそうだ。

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