2009-09-28

春の歌

 僕は彼女を好きだった。どんな風に好きだったかというと、彼女にいやらしく言い寄る自分想像すると嫌な気分になるくらいに。

 だから僕は彼女との間に恋愛を持ち込みたくなかった。彼女のためになることだけをしたかった。それが単なる綺麗事であるということは重々承知だった。そんなの僕の思い上がりだし、机上の空論であり、そんな関係は現実にはあり得ないのだから。

 彼女との関係は進展しないまま、数年が過ぎた。

 しかし、最近になって別のことを思う。それは、彼女のためになることだけをしたい、という僕の思いは、綺麗事ですらなくて、僕の欲望が不自然に形を歪めた物なんじゃないか、という考えだ。

 結局の所、僕は自分の欲望に絡め取られてよくわからないところで足踏みしていただけなのかもしれない。そしてそういう在り方は僕にとってはいつものことであるような気もする。

 ここまで書いてきたように、僕は常に自分の気持ちについて考えてきたけれど、自分の本当の気持ちはよくわからないままだ。そもそも、人が自分の本当の気持ちを知るのは絶望的に困難なことだ。だから周りに何故告白しないのかと言われても、僕は彼女に一体何を伝えればいいのかわからなかったのだ。

 多分普通の人は、わざわざ自分の本当の気持ちについてまで考えずに、恋愛をしたり日々暮らしたりしているのだろう。でも僕は十代の半分位をそういう事を考えてながら過ごしてきた。

 結局僕は何も得ていないのかも知れない。でもある意味では自分の欲望の赴くままに生きてきたのかもしれないし、彼女はまだ僕の前からいなくなったわけではない。

 何が良い事で何が悪い事だったのか、僕にはまだよくわからない。いつかわかる日がくるんだろうか。もしかしたら一生わからないのかもしれないけれど、それはそういうもんなんだろうと納得している自分もどこかにいる。あるいは僕は単なる無気力なんだろうか?よくわからない。

  • 素直になれとしか。 それと、もっと本気で悩め。 伝える言葉が自然に出ないなら、自分にとってはその程度の相手ってコトだ。

  • 一生抱えていけ。 「自分の本当の気持ち」なんて、一生わからん。 考えれば考えた分だけわからんようになる。 稀に閃いても、それは「解ったような気になっただけ」だ。 十年も経て...

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