それはうまくいっているところは見えにくく、過小評価されるということだ。情報システムの運用は問題が起きないことがベストである。しかし逆に問題が起きないと経営者や周りからは仕事をしてないように見られ、評価が下げられてしまう。こうした問題が起きてしまうのは情報システムの運用ではうまくいっている事実が観測しにくいからである。解雇規制も同様だ。解雇規制の目的は法的に不当な解雇を禁止することである。従って法的に不当な解雇がなされないことが評価基準となる。しかしその評価は難しい。規制がうまく働いている場合、解雇がなされないからだ。解雇されないという事実は観測できない一方、規制がうまく働いていない面ばかり観測され過小評価につながりやすい。解雇規制と情報システムの運用には、うまくいっている部分は観測しにくいという共通点がある。
では解雇規制はうまく働いているのだろうか?私個人としてはうまく働いていると思っている。解雇規制を緩めるべきだという主張に対しては、よく「解雇規制はうまくいっていない。証拠にこんなひどい例がある。」という反論がなされる。しかしこうしたものの見方はさきほど述べたように、うまく働いている部分を無視した一面的なものだ。私は全体を見れば解雇規制はうまく働いていると考える。例えば今回の不況では非正規雇用中心にリストラがなされている。解雇規制が働いていないのなら、正規雇用もリストラされなければならない。確かに正規雇用もリストラされているのは事実だが、非正規雇用に比べたら少ない。また新卒の採用も不況の度、抑制されている。経済的には成長が見込めない高給な高齢者を解雇し、低給な若者を雇用し成長させるのが短期的にも長期的にも合理的である。しかしそれがなされないのは解雇規制が働いているからだと考えられる。このように全体を見てうまくいっている部分を推測してみると、解雇規制は例外があっても充分に機能しているというのが私の考えである。