「今日はガツンと言ってやるということですが?」
「はい、腹蔵なく、率直に申し上げます」
「ガツンとは何のことですか?」
「問題点を抽出して、それを分かりやすい形に概念化、あるいは言語化して、この思い届けとばかりに言うことです」
「え? 問題点?」
「……で、どういう風にでしょうか」
「大変に危険です。無自覚すぎる人が多い。ナイフの使い方を知らない人間が何かの拍子にナイフを拾うようなものです」
「いや、ナイフと言葉は違うでしょう。それにナイフで危害を加えるのは犯罪ですよね」
「でも、言葉は誰かの精神を二度ともとの状態には戻れないほどに痛めつけるための道具として悪用できますよ」
「いや、痛めつけるとかそういう問題じゃなくてですね……」
「もちろん、天網恢々疎にして漏らさずで、そんなことをすれば、使った方もまた、大きく痛めつけられます。ニーチェの「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」というやつです」
「ふざけないでください。それに深淵って何ですか。だいたい……」
「主にブックマーク界隈を中心として、言葉への無自覚さにより非常に危険な場を形成しています。冗談ではなく近いうちに人死にが出るでしょう。そうなってからでは……」
「聞いてません。もう会社に押し掛けないで下さい」
「あれあれ? 帰っていいんですか? 事象をえぐり出し、概念化し言語化したうえで、ガツンと警告を発しますよ。何もぼくの専売特許というわけではないのですが」
「いいですよ。言って下さい。ガツンと。それで満足したら帰って下さい」
「まだ許可をもらってないのですが、あえて一つだけ言うならば……」
「帰れよ」