2009-04-30

とうとう俺も禿げてきた。以前と比べると、明らかに前髪の生え際が後退している。頭頂部が薄くなってもいる。髪の毛一本一本が力を失っているようにも見える。最近は鏡を見るたびに寂しくなった頭に目をやり、思わず溜息をついてしまう。

親父も祖父も叔父も従兄弟もみんな禿げていたが、俺だけは禿げやしないだろうという根拠のない自信を持って安心していたら、やはり遺伝の呪縛というものからは逃れられないものらしい。それを実際にこの身で知って、正直なところショックを感じた。

俺は髪の毛のふさふさであるのが自慢だった。美容室に行けば美容師にさらさらしていていい髪質だなどと言われるほどだったから、自分の髪というものにそれなりの自信もあった。

だから親父の頭がツルツルなのを触ったり、友達の中に禿げ始めたのがいればさっぱりしてきたねなどと皮肉たっぷりに言ったりと冷やかしていたものを、今後はもう冷やかしてもいられない。逆に俺が冷やかされる立場に置かれてしまったのだから。

さんざん他人の禿なのを馬鹿にしておいて、その自分自身が馬鹿にしていた禿になってしまうというのだから、滑稽以外の何でもない。きっと髪の毛の神様が俺の行いを見ていて、俺は罰が当たったに違いない。

ただ幸いなことに家族も友達も同僚も、誰も俺の髪の薄くなったことに気が付いていないらしい。あるいは、気が付いていながら俺を思いやって真実を口にしていないのかも知れない。しかしその内心では、禿だ禿だと少なからず思っているのだろう。

禿は馬鹿にしてはいけない。

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