オレはじいちゃんが大好きだった。
オレと2つ下の妹は、じいちゃんの家に預けられた。
ばあちゃんはオレが生まれるよりも前に死んでいたし
ずっと一人暮らしをしていたじいちゃんは、心底嬉しかったんだろう。
オレ達兄妹にいつでも優しく、ニコニコ笑っていた印象ばかり残ってる。
じいちゃんの家で暮らし始めて1年程たったある日、親父が唐突に
オレ達兄妹を引き取りに来て、その生活は終った。
身寄りと呼べるのはオレら一家だけしかなかったじいちゃんが
また一人で寂しく生活する事を想うと、その時は涙が止まらなかった。
そんな大好きだったじいちゃんの墓参り・・・今年は今までと少し違った。
墓の前で手を合わせると、じいちゃんがオレ達家族に語りかけてきた気がした。
いや、気のせいなんかじゃない。紛れもなくあの優しいじいちゃんの声だ。
大丈夫だよ、じいちゃん。
親父もお袋も妹もそしてオレも、皆ここにいてじいちゃんの事を想っているよ。
寂しい思いをさせて本当にゴメン、じいちゃん。
親父が一家心中なんか考えなければ、今頃一緒に暮らしてたかもしれないのに。