まず長期に渡って財政出動を維持するのは、借金がふくれあがる為に不可能という前提を置く。
で、成長率の落ち込みが最初から一時的なもの、つまり単なる景気の波や金融危機などが要因であれば、
財政出動には景気が自律的に回復するまでの「つなぎ」としての意味はある。借金も小規模で済む。
けれど、労働力人口の減少や技術革新の停滞などで長期的に成長率が落ち込む場合には、
前提条件から財政出動を止めた場合、成長率は元の低い水準に戻ってしまう。
こういう場合は金融緩和でインフレ期待や通貨安を引き起こし、持続的に景気刺激する必要がある。
アメリカは労働力人口も伸び続けているし、技術革新が急激に停滞したという証拠も今の所ない。
だからクルーグマンがアメリカは後者のケースにないと判断して、「つなぎ」としての財政出動に
肯定的になってもおかしくはない。一時的とは言え今回の景気落ち込みは酷い物だから、
政府はやれる事をやるべきだという主張だろう。
ちなみに日本のように長期に渡るデフレに陥っている国でしか使えない荒技ではあるけど、
「長期に渡る財政出動は不可」という前提は、インフレ税を財源として、すなわち日銀による
国債買い上げを財政出動と併用する事で回避可能。今も急激に物価が下落中だから
チラホラ政府紙幣を使えと言うような主張も出ているようだけど、あれも大体は同じ事。