「今ごろ犯人は遠くに逃げているでしょうね。」と明はため息混じりにつぶやく。
「すぐに捕まるわ。昔と比べて逃げづらいから。」
明は疑問を表情に出して見返した。
「現代の世の中は逃亡犯に圧倒的に不利なのよ。分かる?」
「警察が優秀だからですか?」
「頭がお留守のようね。人の優秀さなんてどの時代も変わらないわ。問題は逃亡犯の相対速度。」
「相対速度・・・ですか?」少し目が覚めてきた。
「中世の時代までは人に可能な移動速度が情報の速度に等しかったのよ。つまり逃亡犯の移動速度と情報の速度が限りなく等しかったわけ。」
「それが何を意味するか考えれば分かるはずよ。」
「ああ。逃亡犯の人相書きが出回るよりも早く逃げられたのか。」
「そう正確には手配書が届くよりも、僅かに早く目的地に到着する事が可能だったのよ。言い換えれば逃げ続ければ捕まる可能性は低かったの。」
「それが現代では逃亡犯の移動速度は極端に遅い。だからすぐに捕まるわ。日本の警察は優秀だし。」
「あれ?それさっき僕が言いましたけど。。。」