「やっぱり実家はいい!」
みたいなことをいうのを聞くと変な気分がする。
父親のことも母親のことも嫌いじゃないけれども、やっぱりなんとなく居心地がそれほどよくない。
居心地がよくないってのは間違いで、居心地は悪くないんだけれども、もう自分の家ではないという感じだ。
たまに帰るぶんにはまあいいんだけども。
帰省すると「おかえり」と言われて「ただいま」と言わないといけないんだが、すごく抵抗がある。
それは学生時代からずっと。
昨日、弟から電話があった、
よく喋るやつになった。
喋り始めるのが遅かったし、小さなころは無口だったくせに、俺が大学で家を離れたころから急におしゃべりになった。
次の四月からどうするのかと聞いたら、案の定何も決めてないらしい。
と聞けばやはりイエス。
なんか、食卓のテーブルが好きじゃないとか、コタツから眺める風景が嫌だとか、シャワーの出が悪いとか、そんなふうに理由を並べる。
別に両親が嫌いなわけでもないし、田舎だから嫌いというわけでもないそうだ。
佐賀だろうが鹿児島だろうが青森だろうが構わない。でも実家は嫌だと。
実家に住むのは論外として、実家の近くの街には住みたくないらしい。
遠くても、馴染みがある街は駄目らしい。
逆に、たとえ近くてもまったく馴染みがない隣町ならまあなんとか大丈夫かもとか。
さすが弟というか、まったく心境は同じだ。
俺の周りの人間が俺に対してもそう思ってるんだろうなと思って鬱々しながら一日中寝て暮らした。
27年間、彼女の一人もできたことがないというのは、やっぱりそういうことなんだと思えてならない。
大学時代、男女比半々で、いま思えば盛りのついた男と女を同じ空間に放り込んで、しかも男女交際推奨みたいな空気だったのに。
獣医学部っていう特殊な環境だったから、実習で苦楽を共にしたし、ほとんどがみな車もちの一人暮らしだったし、くっつくには最適だったのにな。
さてさて、それは別の話で。
話を戻そう。
両親のことは、嫌いなわけじゃないんだけど、むしろ好きではあるけれども、あんまり近づきたくない、そんなふうに思う。つうかこれが正常だと思うわけだが、いわゆる親離れというやつ?
「やっぱり親兄弟、家族、地元が一番!」みたいなラップが流行る今の時代ってちょっとどうなの?って思う。
現代の閉塞感を、悲壮感なく肯定しているこの状況は、むしろ閉塞の末期なんじゃないかと思う。
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