終電間際の山手線に乗ると、彼のことを思い出す。大勢で飲んだ後はいつも私たちだけこれに乗って、彼の最寄り駅まで手を繋いで、とりとめない話を、時には死ぬほど重い話をしていたなって。
今は私には、ちゃんとした別の彼氏がいる。だからもう、そんなことする日はないんだな、と、ふと思う。そもそも彼には恋人がいるんだから、おかしな関係だったんだけれど。
からっぽの右手をにぎにぎして思い出す。ごついけど小さくて、女の子の扱い方をよく知ってるあなたの手が好きだった。茶化したりもするけれど、ゆっくり話をしてくれるあなたの声が好きだった。本当に本当に、だいすきだった。
ああ今でもやっぱり君に、撫でられたいや。彼氏に不実な自分がふがいないや。
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