僕は、勉強ができなかった。
田舎の旧家に生まれ、親や親戚の叔父さん達の多くは医者だった。当然、僕も医者になるように育てられたのだが、僕は医者になれるほど学校の勉強ができなかったし、興味も持てなかった。僕は、どちらかというと、一人で本を読んだり音楽を聞いたりするのを好む、孤独な少年だった。
妹は、両親の言いつけを守って医者になり、医者の旦那と結婚して家を継ごうとしている。
義絶を経て、僕は家を飛び出したけど、どちらかというと追放されたと言った方が正しい。そんな僕も、次の春からは大学の教員になる予定だ。専門的な学術は、大学受験の暗号学のような試験とは、別の次元で展開されているし、僕個人は明らかに専門的な学術世界に適正があった。
家の中では、お勉強が出来ないだけの理由で、差別され、虐げられて育ったけど、お勉強が全てではないんだよと、その当時の僕に言ってあげたい。