いま思えば、大学の研究室時代の先生(教授や准教授)たたきは、研究室というローカルな範囲での文化だったんだ。先生をたたく(=悪口を言う)という決まりごと、つまり文化を設けることでコミュニケーションコストを節約していたのだろう。日本という範囲で例えるなら、根拠は薄いけどとりあえず政治家をたたいて話のきっかけをつくったり、話を持たせたりすることに相当する。
みんなが先生をたたくので、たいていは俺も流されてよく先生をたたいた。俺は鈍いので、ほんとうは先生を尊敬しているところもあるんだけどなぁ、などと違和感や罪悪感を感じていた。先生たたきが文化だと考えれば、とりたてて気にする必要はなかったわけだ。みんなだって、いつもたたいているからといって、それがすべて本音だったわけではなかったのだろう。