2008-07-23

猫にしてやれること。

土曜の夜、実家の母から電話があった。実家で飼っている猫「こてつ」の腹から、腸がだらりと出てしまったという。「今、父さんと○○○(妹)が救急動物病院に連れて行ってる。一応お前にも知らせておこうと思って」と。

10年ほど前、まだ高校生だった妹が連れ帰ってきたタキシード柄の子猫、それがこてつ。「じゃりん子チエ」に登場する侠気あふれる猫からとったその名のせいか、とにかく気が強くて暴れん坊な猫に育った。妹が階段を昇るたびに噛みつき、叱られてもぷいっと顔をそむける。その割に男には従順で、妹はよく「あたしが連れてきたのに!」と怒っていた。たぶん、こてつの中のヒエラルキーでは、自分は妹の上という位置づけだったんだろう。妹が泣いているときだけは、トコトコとそばに寄り、大人しくじっとしていた。

こてつが来て、家は明るくなったと思う。猫がくつろいでいる横で真剣に怒ったり落ち込んだりするのは、なかなか難しい。自分もだいぶん助けられたので、興奮して噛みつかれ、縫うほどの傷ができても捨てようなんて気にはならなかった。自分が家を出たあとも、帰って名前を呼ぶとにゃあと返事をしてくれた。

4,5年ほど前に、こてつは一度尿結石で入院したのだけれど、ストレスのせいか、入院中に自分で患部を少し食いちぎってしまった。カラーをつけていたにもかかわらず。そのときは何度か手術をして、なんとか事なきを得た。尿漏れしやすくなってしまったけれど。

土曜の出来事は、このことが一因になったのかもしれない。お腹のあたりが皮膚病のような状態になっており、そこから腸が80センチほど出てしまったということだった。

緊急手術は8時間に及んだらしい。自分は家で報せを待っていたけれど、いつの間にか眠ってしまっていた。翌日の昼頃に、ひとまず手術は成功したと連絡があった。腸を切除し、縫い合わせ、尿結石のときとは別の動物病院にしばらく入院することになった。

月曜に、面会に行った。やっぱり病院キライらしく、グルルルルとうなっている。(怒る元気があるだけ、まだいい。)カラーをつけられているので、顔は毛だらけ。なだめながらぬぐってやると少し大人しくなったが、獣医さんが姿を見せると、またうなる。午前中の診療でも怒ってしまって手が付けられないので、父を呼んだそうだ。駆けつけたヒエラルキーの長に「コラッ!」と怒鳴られ、こてつはようやく黙ったらしい。ブスッとした表情が目に浮かぶ。

一命は取り留めたけれど、縫合箇所がちゃんとくっつくかどうか、腹膜炎を起こさないかどうか、入院中の5日間が山らしい。もし無事退院できたとしても、長くは生きられないかもしれない。腸を切除したので、食事は制限されるだろう。

実家に帰るときは、少し高級なカンヅメを持って行ってやったりもしたんだけれど、それももうできない。他に何をして喜ばせてやることができるだろう、と考えると何もなかった。これまで、こてつからたくさんのものをもらってきた。あのガンコじじい猫に少しは孝行してやりたいのだけれど、どうしたもんだろうか。

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