俺と友達のユウキは、今年の海水浴を楽しむべく水着やバーベキューのための
設備を色々買い込むことにした。幸いにもバイトで貯まった金があるので、
今年こそは彼女いない歴=年齢のお互いが浜辺で女の子たちと仲良くなって
いいひと夏の思い出を作ろうぜ、と張り切っていた。
格好つけて濃い黒色の、タモリが普段使ってるようなサングラスをかけて
俺たちがデパートの水着売り場まで行った時(当然その売り場でばったり
いい女の子と会ったらナンパでもしてみるか、と思っていたのだけど)、
大体マネキンというのは手足が途中から切り落とされてトルソーに頭を
くっつけた状態のものしかないのが定番だ。手足があればそれだけ
衣服を着させるのが面倒だからだ。
しかしそのマネキンは手足も揃っていて、眩しい笑顔が印象的なものだった。
多分手足を外して着せてまた手足をくっつけたのだろう。
着せられているのはどうやらどこかのスクール水着のようだ。
スクール水着特有の質感に少し息を呑んでしまう。
「随分マニアックな店だなここって。おい、あれの横に立ってみ?」
俺はそう言われてそのマネキンと並んだところ、ユウキが携帯を取り出した。
「何するんだよ?」と俺が言うとユウキは答えた。
「せっかくだからマニアックなスク水の写真とって友達に送ろうぜ」
「分かったよ」と俺は言ってマネキンと並んだ。全く、こういうオタク趣味が
「いくぞー」ユウキは携帯を取り出して俺たちの写真を撮影した。
「一応お前の知り合いにも送るわ」
「いーよ、そんなことしなくってさ」と俺は答えたが
ったく、ビーチでスク水なんか着てる女がいるかっての。
「ユウキってマジでスク水好きなんだな。マニアックっつーかアホというか。
でもさ、折角の写真送ってもらって悪いけど、目瞑ってたぞ。間抜けだなー。
大体一緒に泳ぎに行くんだろ? それなのにスク水ってってどんだけー」
俺はふと寒気を感じて返信した。
どんなのか見てないんだ。こっちに送ってくれ。出来るだけ早く。頼む!!」