2008-02-20

紺屋の白袴

こちとらイメージ重要な心の癒し商売だ。

いや、カウンセラーとかそういうんじゃねえよ。

まあ、お香を売ったり精油を売ったりしてると思いねえ。他には雑貨とかお守りとかさ。和風じゃなくてタリスマンつうのかなんなのかアジアンテイストな感じのアレな?スピリチュアルまで行っちゃうと客層がアレになっからよ、まあ雑貨好きの趣味人とかを相手にしてる。

でさ、なんか営業電話がかかってくるわけよ。

「これからはインターネットの時代です!ネットショップ開きましょう!絶対いけますよ!」とかいうのよ。

こっちはさあ、今の店舗をそこそこ維持して楽しくやってけりゃいいやって感じだし、もうネット上に競合はわんさかいるわけでさ。あんまり乗り気じゃなかったわけ。

でもしつこいからこっちも折れてね。

押し問答の末にさ、サイトの費用やら維持費やらは全部そっちもち、こっちが仕入れと発送担当利益はこっちがちょっとだけとってまあ大半はあっちにやっちゃうってことにしたわけ。ドロップシッピングとかいうのか?それのうちの店版な。

最初は良かったんだよね。件数も少なかったしさ、こっちは楽で。大して儲かんないけど店は普段通りだしな。

でもあっちがさあ。あせっちゃってさあ。

極端に宣伝し出すわけ。もうべたべたとさ。行く先行く先宣伝がみえんの。電話してても声がうわずっちゃってさ、事務連絡の後にぼちぼちやりたまえよって言ったら受話器がガッチャーン。余裕無いの。

まあでも注文がこなきゃこっちはどうしようもないしさ。取り分がどうとかじゃなくて全部渡したってお小遣いぐらいの金額しかねえんだもんよ。

電話じゃらちがあかねえとか言うから閉店後の夜中に来てもらったんだけど、もう見るからにストレスたまってんの。自分がどんだけ売ろうという努力をしているかとかさ、最初の営業電話より激しい勢いでまくし立てるわけよ。よっぽど金使っちゃったんだなアレはさあ。

どうせそんなことだろうと思ってさあ、落ち着く香を最初から焚きしめてたんだけどまあ見事にだめだったね。ハーブティーだってがぶ飲みしちゃうしさあ。

わかってたことなんだけどさあ、原因がはっきりしてたら癒しなんてきかねえんだよなあ。色々小さいことが積み重なって、こんがらがって疲れて、そんなとき、そこをときほぐすためにうちの商品ってあるんだなって。そこをこう「借金」とか「利子」とかがこれ以上なくはっきりとどかーんってなっちゃってたらまあ、だめなんだなあ。

んで今後の売り上げ向上策とか色々話し合って、辞典を作ったらどうかとかアフィリエイト始めたらどうかとかいうんだけどあっちにどんどん負担かかるじゃない。無理だと思うなら投げ出しても良いんだよ、損が大きくなりすぎねえうちに退くのも商売のうちなんだからようって言ったらまた顔がこわばるこわばる。どれほど損がでてんのかききてえけど聞いたら最後てえへんなことになりそうだったんで聞くのやめといたわ。

しまいにはとりあえず売り上げ向上策のために200万いるから投資してくれとか言い出しやがった。そんなのいきなりでねえよと。余裕資金がはいそうですかとそんなに出せるほどでかい店じゃねえだろうちは。

ちいと頭冷やしなっていってうちの店のおすすめセットをタダでもたせてやったけど、まあ役にたたねえだろうなあ。でもさあ、心に余裕のない奴から心のための商品を買ってくれるほど心の広い奴はうちの商品を必要としてねえんだよ。まず自分がおちつかねえと、な?



※この小説フィクションです。実在の人物、店舗サービスウェブサイトはてなキーワードなどとは一切関係ありません。

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