「反民主主義」を標榜した人間が選挙に立候補して、民主的手続きで当選したとする。
この場合、彼が選出された手順が全く「民主的」であることに疑いはないが、それは彼の主張内容が「民主的」であることを意味するわけではない。彼の主張が民主主義的と言われるか否かと、彼が民主的に選出されるかどうかとは、この場合明らかに関係ない。「彼は民主的に選出されたリーダーなのだ」という事実と「彼の主張は反民主主義的である」という意見は、全く矛盾しないのだから。
「棄権者は金権選挙を民主的に支持している」というそちらの意見と「金権選挙は民主主義の敵であり、従って棄権者は民主主義に敵対している」というこちらの述べる内容も、また、全く矛盾するものではない。前者は後者に対する何の否定にもならない。民主主義社会で金権選挙を支持する人間の思想は、公職選挙法の持つ意味合い一つ考えても、まあ言って「反民主主義的」であり、もし実行した場合は犯罪であり逮捕されるわけだ。つまり「棄権」という行為は、その犯罪行為をやりやすくする、場合によってはそれを幇助するに等しい行為だと言うことを分かって頂けるだろう。