むかしむかしあるところに、いっぽんのはしごがあったそうな。
そのはしごにはよこぼうがいっぽんありませんでした。
ひにひにはしごはふるくなっていきました。
ひがたつにつれて、はしごはあせりました。
とうとうはしごがいいました。
「だれかわたしをのぼってはくれませんか。」
そこにどこからともなくきつねがあわられました。
きつねはいいました。
それいらいというもの、きつねはそのはしごをのぼろうとどりょくしました。
いちだんぬけたはしごというものをのぼろうとすると、
いらないところにちからがはいってしまいうまくのぼれません。
それでもきつねははしごをのぼろうとしました。
はじめはうたがっていたはしごも、
きつねのけんめいさにこころをうたれました。
しだいにこのきつねはわたしをのぼってくれるとしんじるようになりました。
そんなあるひのことです。
きつねがさんぽをしていると、うえにのぼるかいだんをみつけました。
どこにでもあるかいだんでした。
きつねはいいました。
「うえにいくならはしごよりかいだんのほうがいい。」
こうしてきつねははしごをのぼることなく、
かいだんでうえにいくことにしました。
それをみたはしごはおこりました。
はしごはいいました。
「わたしはあなたにすてられました。」
それをきいたきつねはいいました。
「わたしははしごをのぼりたいわけではなく、うえにいきたかったのです。」
そうしてきつねはかいだんをのぼっていきました。
はしごはいまもどこかでのぼってくれるひとをさがしているかもしれません。