火が灯らない。
私のボールペンから文字を紡ぎ出すためには、とにもかくにも火を灯さないといけない。
マッチの火を近付けても、ガスコンロの火に近付けても、ボールペンはどろっと融けて黒く変色し、鼻をねじ曲げるような異臭を放つばかり。
このままでは火事になってしまいそうだ。
文字を紡ぎ出すためには炎を灯さなければならない。
それは橙色のまんじゅうの中に赤いいちごが隠れていて、だけどそれらはいたって平面的な映像にしか見えなくて、重さを全くかんじなくて、触ると火傷する。
炎はぱちぱちと火花を散らして、私に語りかけて来る。
「文章を書きたいのだろう。だったら、もっと、もっと火を灯せ。」
私は言われるがままに火を灯し続けてきた。
それなのに、今さら火が灯らないなんて。
ばきっ。