2007-11-29

あるへやについて

床に寝転がっていると,階下からのテレビの音が聞こえる。誰かが笑ってる。誰の声か,何を言ってるか,さっぱりわからない。だけど,狭くて静かすぎるこの部屋で,その声は妙ににぎやかに聞こえる。コタツのファンの重いうぉぉんという音が低く響いていて,眠気を誘う。

あの部屋は私の安楽の地でいつだってすぐにでも帰りたかった。いつだってまぶたの裏に西日が差し込む暖かい部屋が思い浮かんだ。優しい色をしていた。なきたくなるくらい美しい景色だった。私はそれを失ってしまった。二度と手にははいらないが、二度と手に入れようとも思わないだろう。私はもはやあのころと同じ気持ちであの暮らしはできまい。わかっているからそれは思い出なのだ。

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