電車に乗る。いつもと同じ顔ぶれが乗り、いつもと同じ顔ぶれが降りる。僕は彼らのことを知らない。彼らも僕のことをまるで居なかったかのようにスルーする。僕は黙ったまま、椅子に腰掛けて目を閉じる。電車はゆっくりと動き始める。ここに僕は一人。周りの皆は僕を知らない。僕は皆を知らない。
僕は一人、椅子に腰掛けている。周りにはたくさん人がいるのに、僕は一人。
だんだんと人が多くなり、立って乗る客が増えてくる。次第に隙間は埋まり、身動きできなくなっていく。目の前に知らない人のお腹。知らない人のカバン。知らない人の右手、雑誌、腕時計。僕は誰も知らない。誰も僕を知らない。あなたは誰?僕を見てどう思う?
僕は一人、椅子に腰掛けている。
東京メトロの懸賞に応募しちゃいないよ。
そりゃあ、僕が二人いたらそのほうがよっぽど恐いわ。