2007-10-08

ねえ、今、ここにいるよね。

訊くと彼はいつもこう言った。

そうだね。

彼の絶望を私は知らない。

ただの一言も遺さずに自死を選んだ彼の目は一体、

何を映していたのだろう。

ずっと傍にいた、

若しくはそう思っていただけかもしれない私は、

私の断片は、そこに少しでもいいから、在ったのだろうか。

或いはしかし、実は何も無かったのかもしれないと、

ふと思い至っては考えを中断させた。

それは常に、驚くほど同じように鮮明に繰り返された。

彼の抱えた恐怖を、

もしかしたら孤独と表せる悲しみを、その度に私は見た。

夜明け前に目を覚ませば、

隣に眠るはずの彼はいつも、四畳半で首を括っていた。

いつもいつも変わらず頬を伝った涙が不快だった。

流れても流れても何も流さない涙は生温かく、不快だった。

この手で私は、彼を撫でた。

掌に滲んだ汗を眺めて私は思う。

この腕で私は、彼を抱いた。

もう、しばらく痺れてうまく動かない。

眼を閉じれば蛍光灯が、瞼の裏を照らした。

ねえ、ここにいたよね。

ようやく彼の声を聞いた気がした。

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