二人暮らしを決めた当時は、お互い不安だった。学生時代同じ学科同じクラブ同じ研究室で年中無休べったりだったとはいえ、二人とも家族以外と暮らした経験が皆無だったのだ。レオパレスとかでお試し二人暮らししてからにしようか長期で旅行とか行ってみる?…などと色々と話し合った。でもまあお金も勿体無い。何とかなる、とか根拠のない自信が出てきたりする。
で、とりあえず見切り発車で行こう!ということで行き当たりばったりに家を探しに行って、勢いとのりで家を決めて、保証人お願いしがてら親に家をでることを告げて(なぜか二人とも相手親には評判がいいため、お互い「○○さんと一緒なら安心だわ」といわれてかるく許可が出た)、お金を払って、そうして8月から二人暮らしは始まった。
すると心配していたのが馬鹿らしくなるほどうまくいった。そうだ学生時代は今よりももっと長い間一緒にいたもんね、と笑い合うことになった。二人とも働いているから朝と夜しか会わないし、休日はどちらかが実家に帰ったりしてずっと一緒というわけでもない。一ヶ月に一回くらいは土日を一緒に過ごして、部屋の大掃除をしたり大物を洗濯したりする。
家に帰って人がいるというのはとてもいい。帰って、お風呂に入って、コーヒーを入れて、ベランダで並んで座って一服しながら一日の出来事を報告しあうのは、本当に楽しい。一番、二人で暮らしてよかったと思う瞬間だ。
お互い拘束しあうタイプでなかったのがよかったのだと思う。晩ごはんを食べるときとか、一緒にTVを見るときは普通に団欒して、後はお互い自分の部屋で好きなことをする。昔からずっと一緒にいる割りにドライな関係だと言われていたのが功を奏したのかと。
何だかんだで二人暮らしは三年目に突入した。
最早家族に最も近い存在だと思う。お互い遠慮は0になった。引越当初は家の中でも多少服装に気を遣っていたけれど、最近は全然だ。パンツ一丁で平気で歩き回るし、襟が伸びたくたくたのTシャツを平気で着ている。腋毛を抜いているところを見られるのも別に恥ずかしくなくなった(これは人として大切な何かを失った結果かもしれないけれど)。お互いの譲れない点や癖も分って、意識しないところで自然に配慮するようになった。
さすがに二人ともそろそろ適齢期なので最近意識するのはこの生活が終わる時のこと。ずっとずっとこのまま二人で暮らせたら楽しいけど、「40未婚の女が二人暮らししてたら引くかなー」とか話したりする。「もし結婚して別れたら子供つれて出戻ってくるから一緒に暮らそう!」とか。
楽しいだけに終わりが来ることが怖い。「どっちかが男だったら何の問題もなかったのにね」と昨日彼女が言った。恋愛感情ではないけれど、でも彼女は私が家族以外で一番近しく思い、好きになった人だ。二人暮らしが終わったとしても、ずっとこのよくわからない縁が続いていけばいいと思う。何となく、一生縁は切れずにだらだらと昔言われたように、「仲がいいんだか悪いんだか分らない」関係を続けていくようにも思うのだけど。