疲れて空笑いすらできなくなり、好きな人に「前は皆、気持ちに余裕あってよかったよね!」みたいなことを唐突に言ってしまった。もう愚痴らないって決めてたのに!後悔が下降気味の気持ちに拍車をかけて涙が滲む。もう笑顔で接客なんてできそうになく、逃げた先の事務所の椅子の上で膝を抱えていた。
新人の頃、よくこうして一人事務所で泣いた。誰にも見られたくないからそうしていたのに、何故か好きな人は私の泣き現場に運悪く居合わせた。沢山先輩はいるけど、謀ってる?!って位にあの人が居合わせた。新人の泣き現場に遭遇した運悪いその人は愚痴を聞いてくれ、そのまま世間話をさせた。憧れの人と話せることも世間話も嬉しくて、仕事中の愚痴なんていつのまにか忘れてた。私が自分の気持ちを止められず、告白してからはその回数は激減した。
そんなことを思い出して鼻をすする。流石に一年前みたいに大泣きはできない。私はもう、後輩だっている身なんだから。…その時事務所のドアが開いた。おまえ、なにしてんの。顔を覗かせたのはあの人だった。俺はトイレ。言いながらトイレ備え付けの洗面所で何故か手を洗ってるあの人。別に何もないですよ、っていつもの憎まれ口。でも、気付いたら最近あった困ったことを話してた。一年前みたいに。一通り気が済んで、二人で仕事場に戻った。…そういえばあの人トイレに来たんじゃなかったっけ。そう気付いたのは帰り道。私のあまりの沈みようにタイミングを逃しただけだろう。期待しちゃいけない。何度も自分に言い聞かせる。