2007-07-16

いいよ

「いいよ。」

え?

自分で告白したくせにその言葉に耳を疑い、言葉を失った。あまりにも予想外すぎたからだ。告白したと言えば付き合うことが前提なんだから驚くことなんてないじゃないかって思うかもしれないけど、自分のはそんないいものじゃなく、本当にただの告白だ。勝手に好きになって、勝手に自分の心をぶつけるだけの、ただの告白。先輩が自分なんかにOKしてくれるはずないし、してもらえるとも思えない。でも胸が苦しくて苦しくてしょうがなかったから、それを吐き出すだけための、ぶつけるためだけの、一方的で勝手な行為。それが自分の告白。そのはずだったのに…

「………へ?」

ようやく出せた言葉は間の抜けた音だった。

「だから、いいよって。付き合おう?」

「…へ?いや、え?で……も…?」

相変わらず状況が飲み込めずに言葉が出てこない。

「ちょっと落ち着きなよ。はい、お茶。」

「あ、ど…どうも…、あ…り……がとう…ござ…いま…す。」

手渡された冷たいお茶を一気に飲み干し、カラッカラに渇いた喉がようやく潤った。

「何でそんなに驚いてるの?ただ、いいよって言っただけだよ?」

冷たいお茶を一気に飲んだせいか堰を切ったように、今まで処理しきれなかったことが頭を駆け回り、思わず先輩に捲し立てた。

「何でって!?だってボクよりかわいい子なんていっぱいいるじゃないですか!?」

「そう?ゆたかも十分かわいいと思うけど。」

「か…!?そ、それにボク全然胸ないし!」

「僕は胸とか気にしないからいいよ。」

「ふ、服装だって他の娘みたいにかわいくないし!」

「そう?似合ってるし、かわいいと思うけどな。」

「性格だって女の子っぽくないし…」

「別にいいと思うよ。ほら、問題ないじゃない?」

確かにそうかもしれない。先輩が女の子っぽい女の子よりもボクみたいな子がタイプな人ならば、そうなのかもしれないし、問題ないのかもしれない。本当にそれだけだったとしたら…もし、そうだったならボクだって1%くらいは期待して告白してたし、いいよって返事にも素直に受け取れたかもしれない。でも、本当はそれだけじゃないし、一番の問題がまだ残ってる。三度の深呼吸をした後、勇気を振り絞って一番の問題を聞いてみた。

「だってボク…男ですよ?」

「いいよ。」

「全部含めてゆたかなんだし、そんなゆたかが好きなんだから。」

先輩の言葉が嬉しすぎてボクは再び言葉を失った。

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