2007-07-05

http://anond.hatelabo.jp/20070705114456

「きっと窓を見上げるようにして林檎売りが佇んでいるのだ」

そう呟いた声が耳に入るや階段を駆け下り七月の炎天の下に飛び出した。

林檎売りの姿はどこにも無く、私の窓の下にあるのは猫の死骸と無数の弁当売りばかりだった。

しかし鼻腔をくすぐる林檎の匂いは強くなる一方なのだ。

私は正答に近付いている。林檎売りはすぐそばにいる。

あともう少し。あと数歩。この手に捕まえ懲らしめてやる。

期待に震えながら近隣をぐるぐると徘徊して、どれくらい経ったろう。

赤銅色のビルディングの窓から刺すような笑うような視線を感じた。

瞬間、喉の奥から蟇蛙をすり潰したような醜く短い悲鳴漏れた。

あの窓は、私の窓。

それから自分が林檎売りになっていることに気付く迄にそう時間は掛からなかった。

記事への反応 -

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん