私は10年来の友達の友情も疑う様な割と疑い深い人間だったのだけれど、ある小説を読んで結構考えが変わった。
「信じるに値しないことを信じる、それだけが本当の意味で、信じるっていうことなんだと僕は思う」
なるほどな、と思った。信じるに値することを信じるっていうのは、単に計算してるだけなんだと思った。
この物語はファンタジーなのだけれど、不思議な精霊が登場する。その精霊はヒロインに、信じられるものを示してくれ、本当に信じられるものを見せてくれと詰め寄ってくる。
物語のクライマックス、思い描いたものの幻影を召喚できる不思議な場所で、精霊はヒロインに信じるものを召喚してみせてくれという。ヒロインは物語の途中で出会った人々を召喚した。その人々の幻影は、ヒロインを守ってくれた。けれども精霊はヒロインに告げる。「欺瞞だ」と。「本物の彼らが君を助けてくれるかどうか、その保証は無い」と。ヒロインはそれにうなづいた。でも彼女は信じることをやめなかった。欺瞞だと分かっていても、本当は信じることが出来ないと分かっていながらも、彼女は信じることをやめなかった。ヒロインは叫ぶ。「ずっと信じてきたじゃない!人はずっと信じてきた。証拠なんかないのに信じることしか出来なかった。もうとっくに、人は信じることしか出来なかった!」「だが疑いもまた消えたことはない」そう言う精霊にヒロインは答える。「あなたは答えだけを求めてる。答えだけを求めてるから何も分からない」
この物語は私には難しい。何度か読み返したけれど、未だによく分からないメタファーが沢山ある。けれども、この物語を読んでから私は無闇に人を疑うことをしなくなったと思う。信じるための証拠をいくら集めたって、疑い続ければそんな証拠も全然信じられないのだから、最終的にはただ信じるしかないよね、といった感じ。でも無闇に信じるんじゃなくて、疑いをもつというか、裏切られた時の覚悟もまた必要だろう、信じるまでの過程にも意味があるのだろう、そう思うようになった。そう思うようになってから、たくさんの人々の言葉が素直に胸に届くようになった気がする。
ちょっとマイナス面を考えておいてプラスだったら嬉しい たったそれだけのこと 人間関係だって上手くいかないかもと思っといて上手くいったら嬉しい ただそれだけ
本当にたったそれだけのことなのかもね。でも私はもうちょっと違う答えを見つけたい。だからもうちょっと考えようと思う。
やあ新刊はよんだかい?
読んだよ。なんだか心がほっこりしたよ。