幼い少年のこいでいる自転車にはサイドミラーがついていた。安全上の理由から取り付けているのであれば問題はない。
だが、彼の自転車についているサイドミラーは、本来つけるべき位置から水平に180°回転させた位置にあり、反射鏡がちょうど正面を向いていた。
ボクは彼とちょうど踏み切りをはさんで30mほど離れた位置で歩いていた。地形は踏み切りを底にしたすり鉢状になっており、距離が縮まったとしても太陽光がサイドミラーで反射され、ボクの眼球に当たる。
「なんかまぶしいと思ったらあの自転車か。」
「どうしたの?」
「鏡か何かが反射してる。」
「オレ背が高いから当たらないや。」
「お前、オレと同じ身長だろ。」
目の前に手のひらをかざして反射光をさえぎる。
「あ、石だ。」
いちいちとうるさい。
少年がボクの横を通り過ぎた瞬間に思い切り手を上げ、後頭部に当てた。
友人の肩が震えた。