「朝は足が四本あって、昼になると二本の足となり、夜には三本足となるものとは何か?」
「答えは人間である。人間は幼年期には這って歩くので四本足で歩き、青年期には立ち上がって二本足で歩き、老いては杖をついて三本足で歩くからである。」
謎かけにはまだまだ先がある。
この生き物は深夜になると4本足になり、手足を無くして床を這うようになった後、さらには動くのを止めてしまう。手足は丸まって、そのうち口と肛門とが臍の周囲に集まってくる。
棘皮動物であるウミユリは、岩に固着して一生をおくる生きもの。「花」の中心に口があって、U 字型をした腸管を経由して、同じ面に排泄孔を持っている。
食べられなくなった老人には胃瘻が入って、床ずれがひどくなってしまった人には人工肛門や膀胱婁がついて、摂食と排泄の穴は、お互い臍の近くに集まってくる。
手足や顔は機能的な意味を失い、臍を中心として丸まって、花弁のように胴体を取り囲む。ウミユリみたいに。
ウミユリ化した人は長生きだ。
栄養を注入するだけだから管理が楽だし、尿や便も全部上に出てくるから、オムツを交換する必要もない。
お金だって稼ぐ。一家4人の生計を支えているのが寝たきりのおばあちゃんの年金だったり。戦争遺族年金がつくと、パパなんかよりよっぽど稼ぎがよかったり。