「我は紳士専用トイレなり。汝に問う。汝、ジェントルメンか? ならば証を見せよ!」
「ちんこ見せたら良いのか?」
「紳士が、ちんこなどと言うか!バカモーン!」
突如、ドアが発光し、咄嗟に避けた俺が元いた場所を焦がした。何だ、このトイレ!
俺は信じられない気持ちで一杯だったが、尿意はのっぴきならないくらいに俺を急かしている。
「いいから、開けろよ!」
「証を見せよ!」
再び、ドア全体が発光した。ドアノブがパチパチいっている。
「あぶねえな!」
「証を! ジェントルマンたる証を!」
ドアの分際で、偉そうに発音しやがる。
「な、なんだと」
「紳士は、紳士と認めた人間の言う事を聞く。貴様が紳士でないにしても、紳士に準ずる存在であるなら、俺も言う事を聞いてやる」
「我は、何をすればよい……」
よし、折れた。
「むむむ……それは、ち、とぅ、トゥインクル」
「んなもんあるかぁー!」
トイレが考え込み電撃の消えたドアを、おもいっきり蹴りあけて、中に入る。トイレトイレトイレ。そこで俺は驚愕する。
「ば、ばかな」
その空間には何もなかった。白いタイルが壁と床を規則正しく埋め尽くしている。
「くくく。紳士に非なるものよ……。紳士たるもの、公衆の便前で、局部をさらすなどもっての外……。家まで我慢するのが紳士の一分。故にこのトイレは、トイレという概念でしかない。ははは。残念だったな」
愉悦するトイレの声を聞きながら、俺は既にある決意を固めていた。
俺の尿意が排水溝から流さていく。流れきらない尿が床を濡らしたが、誰も入れないし、誰も困らないだろう。